#23.オイル漏れ探求。KH250編

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オイル漏れの原因は多種多様。様々な可能性を探る。


オイル漏れ。もっともポピュラーなトラブルの一つです。直すのは単純で"オイルが漏れないようにすればいい"のです。しかし、"どこから何のオイルがどうして漏れているか?"これは車輌によって千差万別で、原因究明には経験値と時間がかなり必要になります。跨って左側の下にオイルが溜まっていた場合、多くの方が「ミッションオイルが漏れている」と思います。しかし、実際は右側から漏れているエンジンオイルが、車体をつたって左にまわっていることもしばしば。今回は長年オートバイに携わってきたゴリラ店長が、今までの経験からオイル漏れの可能性が高い箇所と原因・対応策を伝授します。ぜひ参考にして下さい。

■まずは右側のオイル漏れを探求。

■オイルタンク周辺


◎オイルタンクキャップ・パッキン
原因:経年劣化・キャップの締めすぎ
種類:エンジンオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
オイルタンクキャップ
パッキン

わかりにくいですが、キャップの締めすぎでヒビが入ってます。

キャップ裏のパッキンも傷んでます。


◎オイルレベルゲージ
原因:経年劣化
種類:エンジンオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
オイルレベルゲージ

経年変化でパッキンが劣化し透明の覗き窓が変形しています。ここからオイルが漏れる事が多いです。

迷わず新品に交換しましょう。


◎オイルタンク取り付けビス周辺からの漏れ
原因:オイルタンク本体の割れ・ビスの締めすぎ・経年劣化
種類:エンジンオイル
対応:修理

オイルタンク本体は経年劣化による歪みや、長年の振動によって割れが生じます。また、ビスの締めすぎでも割れる事があります。


◎オイルタンクフィルター
原因:経年劣化・締めすぎ
種類:エンジンオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
オイルタンクフィルター

フィルター本体の劣化、締め過ぎによる取り付けネジ山の破損、ホース差込口の折れなどが要因でオイル漏れが発生します。

内側にOリングが使用されていますが、締め過ぎるとOリングを傷めたり、よじれてしまったりします。交換時の締め過ぎには要注意。


◎オイルタンクホース
原因:経年劣化
種類:エンジンオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
オイルタンクホース

劣化したホースを何度も取付け・取外しを繰り返すとホースの取付口が傷みます。こうした、ちょっとした事からオイルのにじみは始まります。また、タイラップ等により締め過ぎも逆に漏れの原因になる場合もあります。

新品製品です。専用品は肉厚できつい取り回しでもオイルの流れを妨げないようなホースになります。

■オイルポンプ周辺


◎オイルポンプカバーグロメット
原因:経年劣化
種類:エンジンオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
オイルポンプカバーグロメット

最近は紛失して付いていない車両も多数みかけますが、オイルポンプ下の四角い穴には、本来やわらかいゴム製の「オイルポンプカバーグロメット」が入ります。

この商品はメーカー欠品商品ですが当店オリジナルで復刻商品がございます。ぜひ装着してあげてください。


◎オイルライン・バンジョーボルト・ワッシャー
原因:振動での緩み・経年劣化
種類:エンジンオイル
対応:部品の新品交換(購入はこちら↓)
バンジョーボルト
オイルラインワッシャー

純正オイルラインワッシャーはアルミ素材の単純な円形のワッシャーと、画像のような回り止め爪がついた特殊形状のワッシャーが使用されています。

弊社で取り扱っているオイルラインワッシャーは内側に厚みのある樹脂が使用されていますので、純正アルミワッシャーよりシール性もよい作りになっています。ぜひ交換をオススメします。

劣化でネジ山にアルミのシール性を保たせる程(規定トルクで)バンジョーボルトを締め付けられないケースが多く、回り止めの爪も殆ど役目を果たせていません。

バンジョーボルト自体が破損するケースも多いです。オイルポンプのネジ穴にスムーズにネジ込めない場合は要交換です。


◎オイルポンプネジ穴
原因:ボルトの締めすぎ
種類:エンジンオイル
対応:修理(出来ない場合もあり)

バンジョーボルトを締めすぎると、ネジ穴がナメてしまいます。こういった場合、ネジ穴を再生するためヘリサートを打ちますが、この時ヘリサートを斜めに打つと取り返しがつかない事になります。

当方に修理依頼されたバイクでも何回かこの「斜め打ち」がされていて、オイルが漏れている車輌がありました。ヘリサート打ちは信頼できるプロに任せましょう。


◎Vリング
原因:奥にあるシール不良
種類:エンジンオイル
対応:修理不可

オイルポンプカムリターンスプリング奥にオイルシールが使用されています。KH250のパーツリスト上では「Vリング」と言う名称で掲載されています。このシール不良につきましては修理不可能です。


◎オイルポンプ取付ビスガスケット
原因:振動での緩み・経年劣化
種類:ミッションオイル
対応:部品の新品交換(購入はこちら↓)
オイルポンプ取付ネジガスケット
オイルポンプ取付ボルト

オイルポンプを取り付けている2本のビス(5mm)の下には、銅製のガスケットが組み込まれていてミッションオイルの漏れを防いでいます。
 

クラッチカバー側のオイルポンプ取付穴は貫通していますので、ガスケットが入っていないとミッションオイルが滲んできます。また、スプリングワッシャーを入れても滲みのげんいんになります。

◎オイルポンプ
原因:経年劣化
種類:ミッションオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
オイルポンプガスケット
オイルポンプOリング
オイルポンプオイルシール
オイルポンプOリング特殊

オイルポンプとクラッチカバー間の取付には、ガスケットやOリングなど様々な漏れ防止の部品が入っています。もちろん経年劣化もしますが、驚いたことに、前回オーバーホールした方が入れ忘れている場合も結構あります。

おかしいと感じたら一度開けてみましょう。しかもこの部分からはエンジンオイル、ミッションオイル共に漏れてくる可能性もありますので、点検の際は新品に交換をお勧めします。


◎エンジン側オイルラインワッシャー
原因:振動での緩み・経年劣化
種類:エンジンオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
オイルラインワッシャー上側
オイルラインワッシャー下側

この部分のバンジョーボルトもオイルポンプ部のバンジョーボルトと同様に締め付けトルクには充分気をつける箇所です。オイル漏れを止めようと、締め過ぎて舐めてしまうと、場合によってはエンジン分解に....。

バンジョーボルトを外した際は必ず新品のオイルラインワッシャーを使用して下さい。締め付けてオイル漏れを止めようと考えないで!


◎タコメーター取り出し口
原因:経年劣化
種類:ミッションオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
タコメーター取出口 オーバーホールキット

ここからオイル漏れをしてる車両も頻繁に見かけます。ケーブルを交換しても直りません。中を覗くとオイルシールが使用されています。 

タコメーターケーブルドライブギアを引き抜くとオイルシールが打ち込まれているスリーブごと引き抜けます。 

 

スリーブの外周にはOリングも使用されています。

オイルシールとOリングのセットになった「タコメーター取出し口オーバーホールキット」で新品に交換です。組み付け時にはOリングとオイルシールのドライブギア接触部には必ず「シリコングリス」、無ければミッションオイルを塗布しましょう。


◎キックペダルシャフトオイルシール
原因:経年劣化
種類:ミッションオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
キックペダルシャフトオイルシール

クラッチカバーの脱着や経年変化でキックペダルシャフト オイルシールは劣化します。

本来はクラッチカバーを外して交換をするのが正しいやり方ですが、画像のようにピック等で掻き出しての交換もできます。ただし、カバー・シャフトに傷を付けないように気をつけて下さい。また、組み付けの際にオイルシールリップ部にも傷を付けないように。オイルシールを打ち込む際はディープソケットや径の合った塩ビのパイプ等を使用すると便利です。


◎クラッチカバーガスケット
原因:経年劣化
種類:ミッションオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
クラッチカバーガスケット

クラッチカバーのガスケットはクラッチカバーを取外した場合は必ず交換です。液体パッキンを大量に塗って隙間を埋めて固める...なんて方法はあり得ません!!。

古いガスケットは綺麗に剥がし、合わせ面に傷やバリがあればオイルストーンで落とす。そして新品のガスケットを使用して組み付け。すべての工程を丁寧に作業しましょう。


■続いては左側のオイル漏れを探求。

◎チェンジペダルシャフトオイルシール
原因:経年劣化
種類:ミッションオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
チェンジペダルシャフトオイルシール

エンジン左側でオイル漏れが一番多い箇所です。もちろんオイルシールの劣化もありますが、チェンジシャフトの摩耗が原因の場合も多いです。

チェンジシャフトに関しては、既に純正欠品パーツですので、今のところシール交換が最善の策になります。


◎ドライブスプロケット裏オイルシール
原因:経年劣化
種類:ミッションオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
アウトプットシャフトオイルシール

この部分のオイルシールがオイル漏れの原因の場合、オイルシールの交換はクランクケースの分解が必要になります。「オイルシールを掻き出して交換できますよね」と言う質問もいただきますが基本的にはできません。

40年以上も頑張ってくれたオイルシール。また40年頑張ってもらうためにも正しく修理しましょう。


◎ドライブスプロケット裏Oリング
原因:経年劣化
種類:ミッションオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
Oリング

このOリングは画像のアウトプットシャフトに組み込まれているスペーサーの奥に入っています。スペーサーを抜いて奥を覗き込むと見えます。このOリングがダメだとスプロケットを止めているナットの下あたりからオイルが滴ります。

Oリング交換の際はスペーサーを抜かなければなりませんが、固着して抜けないケースがほとんどです。だからといってスペーサーをバイスプライヤー等で無理やり抜こうとするのは厳禁です。


◎プッシュロッドオイルシール
原因:経年劣化
種類:ミッションオイル
対応:新品交換(購入はこちら↓)
クラッチプッシュロッドオイルシール

クラッチレリーズを外すと奥に見えるオイルシールです。クラッチプッシュロッド(ショート)を中心に、クラッチレバーの操作に合わせて動いています。シールの劣化や、プッシュロッドの腐食がオイル漏れの原因となります。ここからのオイル漏れは、クラッチレリーズを取り付けている下のビス周辺からオイルが滲んできます。

こちらのオイルシールも残念ながらクランクケースを分解しないと交換できないオイルシールです。


◎左側クランクシール
原因:経年劣化
種類:一次圧縮のもれ
対応:新品交換(購入はこちら↓)
クランクシール単品左側

ここからはガソリンとエンジンオイルの燃え残りが滲んでくる場合があります。内側のクランクケース内は、一次圧縮の工程が繰り返されますので、一次圧縮漏れとなりエンジンコンディションに関わってきます。ポイントカバーを外して、カバー内側下あたりにネッチョリしたものが溜まっている場合は要チェックですね。
 

ただし、こちらのオイルシール交換も要クランクケース分解です

今回の特集はいかがでしたでしょうか?エンジン周りでは「エンジンオイル」「ミッションオイル」「一次圧縮の燃え残り」など様々な「オイル」が、様々な場所で漏れてきます。これを一緒くたに「オイル漏れ」では括れません。「オイル漏れ」は車輌によって全く異なる対応が必要な、意外とシビアな修理なのです。ご自身のバイクで「オイル漏れ」がおきた時は、このHPを参考に一つづつ順を追って、オイル漏れ箇所を探求してみて下さい。