クラッチの滑りは摩耗だけではありません。
走行時にアクセルを開けたときに回転数ばかり上がってスピードが出ない。これは典型的なクラッチ滑りの症状ですが、その他にも「クラッチレバーを握っているにもかかわらずクラッチが切れない」「発進時に1速に入れるとエンストしてしまう」そんな症状がある時もクラッチに原因があるかもしれません。一度クラッチ板の状態を確認してみましょう。
今回使用するクラッチリペアキットです。
◎キット内容:
・フリクションプレート×7枚(250/350は6枚のみ使用)
・スチールプレート×6枚(250/350は5枚のみ使用)
・クラッチカバーガスケット×1枚
事前準備で、まずはミッションオイルを抜いておきます。
次にオイルポンプカバーを外します。ちなみに画像のオイルポンプカバーは当店オリジナル商品ドレスアップオイルポンプカバーです。
オイルポンプ及びオイルライン。
ちなみに今回はオイルタンクホースも交換します。画像のようにホースが硬化してしまうと割れる場合もありますので要チェックです。
こちらが新品のオイルタンクホース。当たり前ですが最初はこんなに柔らかいのです。
弊社で取り扱っているオイルタンクホースは多少の曲がりでもオイルの流れを妨げないように、肉厚のタイプを使っています。
オイルラインのオイルポンプ側のみ外します。
ケーブルワイヤーレバーからスロットルワイヤーを外します。抑えているツメを折らないように要注意!
ツメは何度も折り曲げられている可能性があり、非常に折れやすいです。持ち上げる際はワイヤーが外れる最小限にとどめておきましょう。
画像のようにケーブルをホルダーごと外します。ケーブルが通っているホルダーは、ノーマルの場合"外れ留め"でクリップが組み込まれていて、ホルダーからケーブルが外れにくくなってるので、ホルダーごと外したほうが簡単です。
オイルポンプ周辺の取り外し箇所は終了です。
次にタコメーターケーブル、
そしてキックペダルを外します。
クラッチカバーを取り付けているビスを対角に緩めます。クラッチカバーに軽く衝撃を与えて外します。その際ケースを割らないように叩き過ぎに注意。今回、店長はゴリパワー3%程度発揮。
オイルラインを折らないように、うまく通しながらクラッチカバーを外して下さい。
クラッチカバーを外した状態。
クラッチスプリングとプレッシャープレートを留めているネジを対角に均等に緩める。
クラッチスプリングを外す。WEBショップではKH・SS250リペア用のクラッチスプリングも販売してます。
プレッシャープレートを外して、やっとクラッチ板のお目見えです。
クラッチ板を取り出します。
こちらが取り出したフリクションプレート。スチールプレートとの接触面が変質していました。
サービスマニュアルではフリクションプレートの厚さは「標準値=3mm」「使用限度=2.7mm」とあります。しかし、経年変化による材質の劣化などを考えると、使用限度前でも交換した方が良いでしょう。
こちらが新品のフリクションプレート(オイル塗布前)。
スチールプレートもフリクションプレートのこびりつきや、半クラッチの多様により焼き付いている場合があります。必ずスチールプレートも交換しましょう。
こちらが新品のスチールプレート(オイル塗布前)。
フリクションプレートの内側に入っているクッションスプリングです。このパーツは純正欠品で、新たに入手は出来ませんので気をつけて扱って下さい。また、組み込みの際には忘れず入れて下さい。
さあ、これから組み込んでいきますよ。まずクラッチ板に塗布するオイルを画像のようなプレートに出しておきます。店長の御用達は「ELF MOTO GEAR OIL」。かなりオススメです。
一枚一枚丁寧にオイルを塗っていきます。
クッションスプリングも同様。
スチールプレートにも同じように。
組み込む順番は、まずはフリクションプレート。
続いてクッションスプリング。
最後にスチールプレート。この順番を繰り返して組み込んで行きます。
クラッチ板を全部組み込んだ後に忘れてはならないのがプッシャー(画像中央)。
こちらも大事。プレッシャープレートを組み付ける時はクラッチハウジングとの「噛み合わせ」に注意。
ドライバーで指し示している部分をしっかり噛み合わせる。ずれた状態で組み付けるとクラッチが切れた状態になってしまいます。
噛み合わせがあっていないと、画像のように隙間が出来ます。
しかっりプレッシャープレートを組み付けたら、
外したときと同じように、対角にボルトを均等に締めていきます。
クラッチ板組み付け後、クラッチレリーズの調整をします。
ロックナットを緩めアジャストボルトを回転させ、クラッチレリーズのレバーを規定位置にセット。ロックナットの締め忘れに注意。
クラッチレバーの遊びをクラッチケーブルと、
ケーブルアジャスターで調整します。
あとは分解した逆の手順でクラッチカバー・オイルラインを組付けをして完成です。
オイルラインの組み付け時にはオイルラインワッシャーも忘れずにを交換しましょう。ここもオイル漏れしやすい箇所です。詳しくは月刊ホット&クール#23を御覧ください。