#13.ミッションの構造と腰下分解組立 後編。350SS編

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絶対にしくじれない戦いがここにはある。


前編から続きで、今回は組み付けです。ここでしくじると二重噛みやギア抜けの原因になり、最悪事故にもつながりかねません。皆様の参考になればと作業風景を紹介していますが、出来ればプロに依頼して下さいね。では、後半スタート!!
 


■アッパーケースにミッション・キックシャフトを組み付ける

キックシャフトをアッパーケースに組み込みます。ここでほとんどの方が困るのがキックスプリングの組付け方向です。キックはペダルはキックを踏んだ後に元の位置に戻ります。そのテンションをケースを閉じた後にかけなければなりません。

まず、位置決めのブッシュの穴とロアケースに打込まれているピンを合わせケースに置く。

その時のキックギアーホルダー(キックギアの内側にある「Uの字」に飛び出るスプ
リングのような部分)を確実にアッパーケースの溝に合わせる。

キックスプリングのケースに挟まれる「L字」の個所を、ケース合わせ面の溝に合わせたときに、画像の赤丸印で囲んだキックストッパーレバーがおおよそ画像の位置にくるようになればOK。
画像の位置に来ない場合は、キックシャフトに対してのキックスプリングの組み付け
を180°変更して再度組付ける。

キックストッパーレバーの位置の拡大画像。
左が正しい位置。右がキックスプリングの組み付けの変更が必要な場合。

ミッションのDシャフト・Oシャフトをアッパーケースに組付ける前にシフトドラムはニュートラル位置にしておく。

セットリングを必ず組み付ける!!
このセットリングの組み忘れはギアの二重噛み等の原因になるので非常に危険です。

オイルシールの摺動面の潤滑にはワコーズのシリコングリスを使用。

Oシャフトに組み込むドライブスプロケット裏のオイルシール内側リップ部に、ワコーズシリコングリースを塗布。

Oシャフトにオイルシールを組み込む。また、ドライブスプロケット裏のカラー奥に入るOリングも忘れずに組み込む

シフトフォーク・ベアリングセットリング・各シャフトのブッシュの穴とケースに打込んであるピンの位置に注意してDシャフト、Oシャフトをアッパーケースに置く。

リフター奥のクラッチプッシュロッドオイルシールをセットする。
もちろん内側にはシリコングリスを塗布。


■ミッションの動きを最終確認

 ニュートラル

1速(ロー)

2速(セカンド)

 3速(サード)

4速(フォース)

 5速(トップ)


■クランクシャフトを組込む

左右のクランクシールそれぞれの内側にシリコングリスを塗布。

左側クランクシールをクランクシャフトに組み込む。

右側クランクシールも同様にクランクシャフトに組み込む。

クランクシャフトセットリングが組み込まれている事を確認してクランクシャフトをアッパークランクケースに組み込む。その際両サイドのクランクシールはなるべく内側に押し付けておく。

液体ガスケットをロアケース合わせ面に塗布。今回使用した液体ガスケットはお客様指定の3M製純正透明タイプですが、当店ではワコーズガスケットメイクを取り扱っております。 お問合わせください。 

合わせ面に最小限で塗布。
弊社では合わせ面に塗布する液体ガスケットは基本的に異物と考えています。異物が合わせ面に入り込めばクランクシールの気密、クランクベアリングの支持力に影響すると考えていますので最小限にとどめております。

無駄な液体パッキンは塗り広げます。

液体パッキンを塗布したロアクランクケースをアッパーケースにセット。

軽くプラハン等でケースを叩く。

クランクケースナット(10mm・6mm)を規定トルクまで2・3回に分けて締め付けます。基本は内側から外側に向かって対角に締め付けます。

締め付けが進むとクランクシールが飛び出てくる場合があるので、規定トルクで締め付ける前にプラハン等で叩いて内側に押し込む。

全てのナットを均一に絞め込んでいく。

最後はトルクレンチで締め付けます。

出来れば1日程置いて再度締め付けトルクを確認します。腰下オーバーホールの終了です。


編集後記:
今回はミッションの仕組み・構造を皆さんにお伝えしたくて、オーバーホールの全手順を公開しましたが、これを参考に素人の方が実践することはお勧めしません。長年の経験と知識がなければ、元通りに組むのは不可能ですし、細かなトラブルには対応できないでしょう。
もし、ミッションに不具合を感じたら当店でなくても、必ずプロの方に依頼して下さい。良い子はマネしないでね!