メンテされたキャリパーを体感せよ!!
「KHのブレーキは効かない」KH専門店をやっていると良く聞くセリフです。しかし、専門店だからこそ、今はっきり言いたい「ボーと生きてんじゃね〜よ!!」(byチコちゃん)。「ノーマルは駄目だから####に換装した」とか言う前に、しっかりメンテ出来てますか?カワサキが開発したノーマルブレーキはしっかりメンテさえすれば、ちゃんと効きます。
今回交換するパーツです。
◎ブレーキパッド
◎キャリパーオーバーホールキットA
◎キャリパーオーバーホールキットB
今回キャリパーO/HするKH250。オーナー曰く「フロントブレーキレバーのタッチが甘い」「ブレーキの効きが今ひとつ」との事。キャリパーをチェックするとブレーキフルードの滲みが確認できました。また漏れたブレーキフルードがブレーキパッドに付着して染み込んでいます。おそらくピストンシールの劣化が原因だと思われます。
まずは車体を安定させます。キャリパーがフロントホークに固定されている時点で緩められるものは緩めておきましょう。ブレーキパイプはフレアナットレンチを使い緩めます。そのあとブレーキフルードが滲んでこないように軽く締め込んでおきます。
キャリパーサポートを止めているナットをキャリパーの裏側から緩めます。
キャリパーの裏側からブレーキパッドを止めているビスを緩めます。
続いてフロントフォークに止めているキャリパーマウントボルト2本をはずします。
※キャリパーマウントボルトはリペアパーツとしてもご用意しております。
続いてフロントフォークに留めているボルト2本を外します。
「フロントフォーク」「ディスクローター」からキャリパーを外しつつ、キャリパー本体とキャリパーサポートを組みつけているスライドピンを抜き取ります。
キャリパーが無事はずれました。
ブレーキパッドを外します。
続いてキャリパー本体をブレーキパイプから外しますが、はずすと同時にブレーキフルードが出てきますので、画像のようにキャリパー下に受け皿を用意しておきましょう。
ブレーキパイプを外せば、キャリパーの取り外しは終了です。
キャリパーを外した後のブレーキパイプは、ブレーキフルードが出てくるので、画像のように受けをつけておきます。
キャリパーの分解開始。まずピストンダストブーツを外します。
次に飛び出たピストンをキャリパー本体の奥まで押し込みます。ピストンを押し込まないとキャリパーサポートを外すことができません。
キャリパーサポートを外します。
次に押し込んだピストンを圧縮エアーを使い押し出すのですが、その際ピストンが勢いよく飛び出てきますので画像のように段ボール等を間に挟み養生しておきます。
圧縮空気は外したブレーキパイプの穴から吹き込みます。勢い良くピストンが飛び出てきますので指等を挟まないように注意。
圧縮空気に押し出されて飛び出てきたピストンです。
ピストンが外れたブレーキキャリパーからピストンシールを掻き出します。
キャリパーサポートからブーツ4つとOリング4つを外します。この部分の潤滑が不十分だとキャリパー本体の動きが妨げられ、ブレーキの引きずりなどの原因になります。ピストンシールほど注目されないので見落としがちですが、潤滑が重要な部分です。
Oリングは画像のように内側に組み込まれています。オーバーホールの際は必ず分解・清掃・グリスアップを施したい部分です。
これでキャリパー分解終了です。
分解が終わったら洗浄作業です。分解したパーツを丁寧に洗っていきます。
ブレーキダスト・油分・水分による腐食や、劣化して変質したブレーキフルード等とにかくキャリパー周辺は汚れ易く落としにくい場所です。
特にピストンシールが組み込まれる溝の汚れは、ブレーキの引きずり等の原因にもなりますので入念に落として下さい。
しつこい汚れの場合は電動ルーターを使用することもあります。とにかく徹底的に洗浄です。
スライドピンも忘れずに。
キャリパーピストンは腐食の具合もチェック。ピストンシールと触れ合う部分に、激しい腐食がある場合、ブレーキフルードの漏れ等の原因になります。場合によっては交換もしくは修理となります。
画像の腐食部分はダストシールが組み込まれる部分です。直接ピストンシールとは触れ合わないので今回はそのまま使用します
洗浄油を使った後はブレーキパーツクリーナー等でざっと油分を落とします。
その後にお湯と中性洗剤でジャブジャブと洗います。
お湯で洗うことにより本体が熱せられ→
洗浄後のエアーブロー時に水分をしっかり蒸発させることが出来ます。
洗浄後のキャリパー部品一式です。洗浄によって塗装等が落ちてしまうこともありますが問題ありません。見た目より機能重視です。
まずはキャリパー オーバーホールキットBのOリング。
キャリパー オーバーホールキットBのダストシール内にもしっかり塗り込みます。
Oリングは4カ所内側に組みつけます。
ダストブーツは外側。同じく4カ所にかぶせます。
潤滑剤を塗ります。一般的なグリスでも構いません。
キャリパーサポートのスライドピンが通る穴にあらかじめグリスを塗っておきます。
グリスを塗ったスライドピンを後から押し込む方法だと、ダストブーツとOリングにグリスが引っかかり、潤滑して欲しい部分までグリスが行き届かないので、必ず予め穴の中に塗っておきましょう。
グリス塗布後ブーツをかぶせます。
続いてはキャリパー オーバーホールキットAのピストンシールの組み付けです。こちらも同じようにシリコーングリースを薄く塗布します。写真はわかりやすいように多めに塗っていますが実際はグリスの色がわからない位です。
シリコングリスが用意できない場合はブレーキフルードでも代用可能です。
をしっかり塗布し、
組み付け。
組み付け完成写真。
キャリパー側の溝にダストブーツをしっかりはめていきます。
ピックなどを使って丁寧に。
しっかりとハマると画像のような末広がりの状態になります。
キャリパーピストンを奥まで押し込んだ状態でキャリパーサポートをスライドさせて組み込みます。この時キャリパーサポートに組み込んだダストブーツが外れやすいので注意してください。
キャリパー本体にキャリパーサポートを組み込んだ状態。
キャリパー本体にキャリパーサポートを固定するスライドピン。もちろんグリスアップ。
画像の部分にはカラーが組み込まれます。しっかりと奥まで押し込みましょう。
スライドピンはゆっくりと押し込みます。勢いよく押し込むと、キャリパーサポートに装着させたダストブーツが破れたり、噛み込んだりするので注意です。
スライドピンのナットを仮締めします。本締めはキャリパーをフロントフォークに装着してからになります。
ブレーキパッドを止めるビスにも塗布。
ブレーキパッドを抑えるプレートの接触面にも塗布。
そして組み付けます。
キャリパー本体の組み立て終了です。注:ナット・ビス類はこの時点ではまだ仮締めです。
キャリパー本体をディスクローター・フロントフォークに装着します。
キャリパーマウントボルト締め付けます。
ブレーキパイプの組付け。締め付けにはフレアナットレンチを使用します。
スライドピストンのナットを本締めします。
ブレーキパッドを固定するビスも忘れずに本締め。
組み付け完了です。
さぁラストスパート。ここからはブレーキのエア抜きです。ブレーキフルードは塗装面に着くと塗膜を痛めます。塗装面にかからないように注意します。
今回ブレーキフルードはホンダの純正フルードを使用しましたが、予算が許す方はワンランク上のスーパープロ4もオススメです。
最後はキャリパーブリーダーからエア抜き。タッチが出たら終了。
フロントタイヤを浮かしてタイヤを回転させ引きずりがないことを確認。また、ブレーキレバーを握り続け、ブレーキフルードが漏れていないかも必ずチェック。問題がなければオーバーホール終了です。お疲れ様でした。