腰下後編です。前回はクランクシャフト・ミッションを組み込んでクランクケースを閉じました。今後は車体に載せた方が作業し易いので、この時点でフレームに搭載させます。各部締め付けの際エンジンが固定されているので締め付けし易いですし、何よりもエンジンを組み上げてからフレームに載せるよりも軽くてすみます(笑)。
後編ではクラッチカバー内の組み付けが中心になります。
■エンジンマウント
組み上がったクランクケースをフレームに搭載し、エンジンマウントボルトを通します。仮り締めでも構いませんが、本締めの場合はケース上部後方と上部前方の締め付けを基準とします。ケース下部後方・下部前方のエンジンマウントボルトにはフレームとケース間に隙間が発生しますので隙間に合ったシムを差込み、エンジンマウントボルトを締め込みます。
■キックペダルシャフト
ここは組み付け方法を頻繁にご質問頂く箇所です。
まず、キックペダルシャフトにキックペダルを仮付けします。
キックペダルを通常方向へ回します。
キックペダルを回しながら、キックペダルシャフト斜め上前方の穴を覗くと「ツメ」が通過するのが分かります。この爪が通過したのを確認して、
キックペダルシャフトストッパーボルトの締め付けを行います。締め付けが終わるまでキックペダルを離さないようにします。
■オイルレシーバー
オイルレシーバーをアウトプットシャフトに取り付けます。このオイルレシーバーは内側の突起が折れ易いので、組み付けの際は突起の根本にクラックが入っていないかチェックしてから組み付けます。
■プライマリーギア
クランクシャフト右側にプライマリーギアを取り付けます。まずは半月の形をした「キー」をクランクシャフトの溝にしっかり入れます。
プライマリーギア内側の溝とキーの位置を合わせてプライマリーギアを差し込み、ロックワッシャー→ナットの順で組み付けます。
プライマリーギアは圧入にはなっていませんので手の力で十分に行える作業です。クランクシャフトの装着部やプライマリーギアの内側にかじり傷がある場合は修正又は交換してから組み付けましょう。ロックワッシャーは損傷が少ない場合は再利用でも構いません。
■チェンジドラムレバー
チェンジドラムレバーの組み付けです。このレバーはシフトチェンジ時の「節度感」を与えます。正常に作動しないと、シフトチェンジ時の誤作動や、爪先に違和感を感じるようになります
組み付け後は画像のようになります。ミッションを回しながらシフトドラムを回転させて動作確認も忘れずに。
■シフトチェンジシャフト
右側からシフトチェンジシャフトを差し込み、左側まで貫通させる。
「チェンジアームリターンスプリングの取り付け」「チェンジアームとシフトドラムピンの組み込み」「チェンジシャフトリターンスプリングの動作確認」などに注意しながら画像のように組み込む。
■クラッチハウジング
さあ、いよいよクラッチの組み込みです。
まずは、クラッチ板の入る「クラッチハウジング」の組み込み。ミッションのインプットシャフトに初期潤滑させたスペーサー及びスペーサーカラーを組み込みます。
アウターハウジングを「プライマリーギア」と「リングギア」の噛み込みに注意しながら組み付ける。
スペーサーを入れインナーハウジングを組み付ける。
ハウジングを固定する「プレーンワッシャー」「ロックワッシャー」「センターナット」を組み付ける。
特殊工具でインナーハウジングを押さえて、センターナットを規定トルクで締め付ける。
この時点でクランクシャフトのプライマリーギアの締め付けを行います。
ハウジングの固定が終わった時点で、画像のようにクラッチハウジングのリングギアとクランクシャフトのプライマリーギアとの噛み合わせに適当なナットを噛み込ませ、回転をロックさせてプライマリーギアナットを規定トルクで締め付ける。
組み付けの終わったクラッチハウジングに初期潤滑させたプッシュロッドを入れ、
新品のスチールボールを入れ、
クラッチリフターを差し込みます。
次はクラッチ板の組み付けです。
■クラッチ板
今回のエンジンに元々組み込まれていたクラッチは純正外の物で、フリクションプレートに割れもあったので、弊社で取り扱っているFCCクラッチキットH2用を使用しました。FCCクラッチキットのフリクションプレートにはツメの高さが3種類(高・中・低)あるので組み付け順序に注意。
すべてのクラッチ板・クッションスプリング・スチールプレートにギアオイル(ミッションオイル)を塗布。特にフリクションプレートには十分オイルを染み込ませて下さい。
まずはツメの高いフリクションプレートを設置。
フリクションプレート1枚はめる毎にクッションスプリングと
スチールプレートをはめます。
ツメの高いフリクションプレートは3枚。
続いてツメの高さが低いフレクションプレートを3枚
ツメの高さが低いフレクションプレートを設置後、リングをはめます。
最後にツメの高さが中のフリクションプレートを設置し、
一番外側になるプレッシャープレートを組み付けます。
この時プレッシャープレートとクラッチインナーハウジングの噛み合わせが確実に合っているか、よく注意して組み付けます。
プレッシャープレートの穴にスプリングホルダー、
クラッチスプリングをはめたら、
クラッチスプリングボルトを締めて、
完成です。
■マグネットローター・タイミングローター
クランクシャフト左側(またがって左側)周辺の組みつけです。
まずはキーを取り付けます。
キーの位置とマグネットローター内側の溝を確実に合わせて、マグネットローターを装着。
マグネットローター外側の突起と、タイミングローター内側の穴を合わせてタイミングローターを装着。
最後にボルトで締め付け。このボルトの締め付けは規定トルクで締め付けてから、ボルトを一度緩め再度規定トルクで締め付けます。
以上で腰下後編終了です。次回は腰上の組み上げをご紹介します。