#12. ミッションの構造と腰下分解組立 前編。350SS編

新品パーツが出ないからこそ、本質を究めるべし。


ドライブシャフトとアウトプットシャフト。この二本のシャフトに組み込まれた1速から5速までの各ギアが、狭いスペースの中をシフトペダルの動きに合わせて横方向にスライドし、シフトアップ&シフトダウンの変速動作を繰り返します。
ミッションを構成する全ての重要パーツは使用限度を超え、交換時期が過ぎているケースがほとんどです。しかし発売から40年以上経ち、それらを構成するパーツはすでに廃盤となっており入手は困難になってしまいました。
だからこそ、その構造をよく理解し「ギア抜け=エンジンの載せ替え」ではなく、「コンディションを維持する為、たとえ中古のミッションパーツでも使いこなせる」そんな旧車カワサキトリプルオーナーを目指しましょう。
 まずは、作業台の上を片付けてなるべく広いスペースで、心を静めて作業に取り掛かります。(それぐらい覚悟を決めて始めるべし!!)
 

Dシャフト(ドライブシャフト)の分解


エンジンからの回転は「クランクシャフト」→「クラッチ」→「ドライブシャフト」→「アウトプットシャフト」と伝わります。まずはミッションの入り口、ドライブシャフトの分解です。

◎ブッシュの取外し
内側のニードルベアリングのアウターレースとDシャフトの位置決めの役目をしています。

ニードルベアリング脇のサークリップを外します。

ニードルベアリングの取外し。

2速ギア上のサークリップを外します。

このサークリップは思いのほか外しにくいです。
サークリップを広げようとするとサークリップ自体が斜めに歪みます。画像のように開き口の反対側をペンチなどでしっかり咥えると、歪みづらく外しやすいです。

◎2速のギアを外す。
2速ギアはDシャフトと噛み合っていて同回転しています。

スペーサー(厚さ1,00mm)を外す

◎5速ギアを外す
5速ギアはシャフトに対してフリーに回転します。

スペーサー(厚さ1,00mm)を外す。

サークリップを外します。

◎3速ギアを外します。
3速ギアはDシャフトと噛み合っていて同回転しています。

サークリップを外します。

スペーサー(厚さ1,00mm)を外す。

◎4速ギアを外します。
4速ギアはシャフトに対してフリーに組み込まれています。
◎1速ギアはDシャフト本体となります。

◎Dシャフト構成部品の全パーツです。
組み込む順序、方向(表裏)を間違えないようにチェックします。今までの修理経歴で誤組みされいる可能性も充分に考えられます。できればサービスマニュアルまたはパーツリストで確認をしたい部分です。

◎各部品の洗浄
洗浄をするとエンジン始動後に音が出る場合があります。スラッジなどを落とす事により金属同士の当たりやクリアランスが変化し音となって現れてきます。これはどうすることもできませんので、粘度の高いミッションオイルを入れてフォローしていくのが良いでしょう。

Oシャフト(アウトプットシャフト)の分解


画像のOシャフトの左端にはドライブスプロケットが取り付けられ、エンジンからの回転パワーがここで初めてエンジン外部へと伝わっていきます。

注意点は基本的にDシャフト分解時と同じです。心に余裕を持って分解していきましょう。

位置決めのブッシュを外します。

サークリップを外す。

ニードルベアリングを外す。

スラストワッシャー(スチール)取外し。 

スラストワッシャー(銅)取外し。

◎1速ギアの取外し。
1速ギアはシャフトに対してフリーで組み込まれています。

◎4速ギアを外す
4速ギアの内側には小さなスチールボールが3つ組み込まれていて、Oシャフト回転の遠心力で動く仕組みなっています。取外しは動画の様にギアを回転させ、スチールボールが遠心力で外側に移動している間に外して下さい。動画では3回目で成功しています。
4速ギアはOシャフトと噛み合っていて同回転しています。

画像の小さな玉が4速ギア内に入っているスチールボールです。取はずれるのと同時に落ちて来ますので無くさないように注意。

サークリップを外す。

スペーサー(厚さ1,00mm)を外す。

◎3速ギアの取外し。
3速ギアはシャフトに対してフリーで組み込まれています。

スペーサー(厚さ1,00mm)を外す。

サークリップを外す。

5速ギアを外す
5速ギアはOシャフトと噛み合っていて同回転しています。

サークリップを外す。

スペーサー(厚さ0,5mm)を外す。

◎2速ギアを外します
2速ギアはOシャフトに対してフリーで組み込まれています。

スペーサー(厚さ0,5mm)を外す。

カラーを外す。

ドライブスプロケット裏のカラーを外します。錆やごみでぬきにくくなっている場合が多いのでその場合は油圧プレス等を利用します。

ドライブスプロケット裏のカラーを抜き取るとOリングがあります。このOリングの入れ忘れや不良の場合この部分からのオイルが漏れます。

Oリングを取外す。

油圧プレスを使用して、溝無ミッションベアリングを取外します。

同様に溝付きミッションベアリングを取外します。

ドライブスプロケット裏の溝付きミッションベアリングはシール不良による水の混入やチェーン調整の不良で、ベアリング自体が破損してることが稀にあります。ミッションベアリングはここまで分解した場合は問答無用で交換して下さい。

◎Oシャフト構成部品
Dシャフトの場合と同じように、組み込む順序、方向(表裏)を間違えないようにチェックします。

各部品の洗浄。

シフトドラム・シフトフォークの分解


クラッチカバー内のストッパーを外す。

プレートの取外し。
シフトドラムを回転させ、ビスが緩められる位置にしてプレートを固定しているビスを外す。

プレートを取り外す。

シフトロッドの取外し。

シフトロッドを抜き取る前にシフトロッドに組み込まれているEリングを外す。

シフトロッドを抜く。

ほとんどの場合、シフトロッドにあるEリングの取付溝に出来ている「バリ」のせいで簡単には抜けないので、画像のように800番ほどの耐水ペーパー等でそのバリを丁寧に落としてから抜いて下さい。決して無理やり叩き出したりしないように。

バリさえ落とせば簡単に抜けます。

抜き取ったシフトロッドとシフトフォークです。

次にシフトドラムの取外し。
まず4・5速用シフトフォークのシフトフォークガイドピンを固定している割りピンを抜き取ります。

シフトフォークガイドピンを外す。

シフトドラムをクラッチカバー側へ抜く。

画像の指す部分はニュートラルランプスイッチとの接点です。念のため緩んでいないかチェック。

洗浄作業。
洗浄と同時にシフトドラムの溝に不自然な欠けが無いか、シフトフォークの状態をチェック。

ミッション組み立ての注意点


基本的には分解と逆の順序で組み立てていきますが、ピストンピンサークリップとスペーサーの取り付けには注意点が必要です。

今回の350SSミッションには厚さが1.00㎜と0.5㎜のスペーサーが使用されています。

必ず現物を確認をしてどこにどの厚さのスペーサーが組み込まれていたのか、パーツリストと照らし合わせて誤組みされていなかったかを確認したい部分です。

サークリップは当時の物と形が変更になっています。

画像のように開き口を広げ歪ませると...。 

サークリップの形がいびつになってしまい、使えなくなってしまいます。失敗しないのが一番ですが、万が一のためにサークリップは余分に用意しておきましょう。

取外しの時と同じように、開き口の反対側をペンチでしっかり咥え、開き口を広げてから組み込みましょう。

ミッションベアリングの挿入は油圧プレス機で丁寧に。決してプラハン等で叩き入れない!!

ケースの清掃


外側はオイルやグリスと泥のこびりつき、内側は古いガスケットや固まった液体ガスケットの除去をメインに洗浄。

洗浄油で洗います。専用の洗浄油が無い場合は灯油で十分です。

ナットを軽く根元まで通してねじ山の洗浄。この時点でナットがスムーズに回らない場合はダイス等で修正または部品交換。同時にスタッドボルトの締め付けもチェック

狭い部分は細いブラシのリューター等を使い徹底的に洗浄。

前編終了


組付けの終わったDシャフト、Oシャフト及びキックシャフト。
洗浄の終わったクランクケース(アッパー)にシフトフォーク、シフトドラムの組み付けも終了です。次はいよいよケースを閉じる作業です。後編に続く!!

#17.エンジン分解。
KH250編

#16.くまがや探訪。
グライダー&赤岩渡船編

#15.ステムO/H。
350SS編

#14.FフォークO/H。
350SS編

#13.ミッションO/H。
350SS編

#12.ミッションO/H。
350SS編

#11.秋を楽しむ。
埼玉県・群馬県編

#10.マフラー脱着。
400SS編

#09.オイルを替える。
KH250編

#08.日本国籍を取る。
H1編

#07.点火を操る。
KH250編

#06.FフォークOH。
KH250編

#05.マフラーを斬る。
KH400編

#04.腰下をバラす。
KH250編

#03.シリンダーを計る。
KH250編

#02.腰上をバラす。
KH250・350SS編

#01.キャブをバラす。
KH400/350SS編